4月8日(金)に本校体育館でコロナウィルス感染拡大防止のため新入生、保護者、教職員とPTA会長で 令和4年度第58回入学式が 行われました。
厳粛な中にも温かな雰囲気で催すことができ、新入生78名にとって思い出に残る式典になりました。
PTA会長は祝辞で「成功の反対は失敗ではなく失敗を恐れて何もしないことです。」「多くのことに挑戦して実りのある高校生活を送ってください」と述べられ新入生にエールを贈られました。
「さわやか浜商生」としての高校生生活がスタートしました。
春の風が日ごとに暖かさを増し、風に舞う桜の花びらが皆さんの入学を祝福する今日の佳き日、ご来賓にPTA会長 前澤信也 様をお迎えし、令和四年度島根県立浜田商業高等学校の入学式を挙行できますことを、ここに、衷心より感謝申し上げます。
ただ今入学を許可しました78名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。在校生、教職員一同、心より皆さんの入学を歓迎します。また、保護者の皆様におかれましては、これまでお子様の成長を温かく支えて来られ、その数々のご苦労を推察し、本日のご入学を心よりお慶び申し上げます。誠におめでとうございます。
本来ならば、この場に多くの来賓の方々を迎え、一緒にお祝いただくところですが、新型コロナウィルス拡大のため叶いませんでした。どうかご理解ください。
さて、本校は、昭和40年、石見地域唯一の県立商業高校として創立されました。「開拓者精神に徹し、気魄と情熱に燃えよ」「学習と部活動の両立に精進せよ」「明朗にして闊達、気品ある校風の樹立に努めよ」という校訓には、強烈な志と行動力、人格の完成と伝統の継承まで謳われています。そしてそれは「未来を切り拓く志を抱き、心身ともに健康で、豊かな心と高い知性をもった生徒を育てる」という教育目標にまとめられ、さらに「基礎学力の定着」と「高度資格取得」などの重点目標として一つひとつ具体化され実践されています。
このような本校教育の理念は、創立当初から一貫しており、現在は「さわやか浜商」(~ビジネスマナーの実践~挨拶、時間厳守、身だしなみ)というスローガンにまとめられ、引き継がれています。一万二千名を超える卒業生は、在学中には学業と部活動等において輝かしい実績を残すとともに、卒業後は、産業界ならびに地域の有意な人材として活躍しています。新入生の皆さんも将来について考え、失敗を恐れず、主体性を発揮して様々なことに挑戦して心身ともに成長してほしいと思います。
次に、昨年開催の東京オリンピック自転車競技についてお話します。一世紀以上の間、イギリスの自転車競技のナショナルチームは、自転車競技の世界で物笑いの種になっていました。低迷から抜け出すことができず、イギリスの自転車選手がオリンピックで獲得した金メダルは、100年間でわずか一握りほどであり、また、3週間にわたって過酷なレースが繰り広げられる有名なツール・ド・フランスではさらに低調で、110年間イギリスの優勝者はいませんでした。最先端のテクノロジーやあらゆる最新のトレーニング法に莫大な資産を投じましたが、どれもうまくいきませんでした。
しかし2003年に、大半の人が気付かない小さな変化が起こり、イギリスの自転車競技の流れは永久に変えられることになったのです。2003年に監督に就任したデイブ・ブレイルスフォードは、一夜にして劇的な変化を起こそうとしていたそれまでのコーチとは違って、「わずかな改善の積み重ね」という戦略を徹底しました。これはすべてにおいて小さな改善を実行するという意味が含まれます。主要な統計データを絶えず測定し、具体的な弱点に焦点を当てました。
もっと広く全体を見るようにする視野は、目に付く問題に近視眼的に固執するのを避けることができます。ブレイルスフォードはこう言っています。「この原則全体はそもそも、自転車を漕ぐことに関係があると思われるすべてのものを細分化して、それを1パーセントずつ改善したならば、すべてを合わせたときに実に大きな改善が図れる、という考え方から来ています。」
新入生の皆さんが自己改善を実行するにあたり、焦点を広げつつも絞る、という方法をとったらどうでしょうか。すべてを完璧にしようとする代わりに、小さなことを一つだけ行おうとしたらどうでしょうか。
例えば、新たに身につけた広い見方によって、家庭学習を毎日行うのを怠っていたことに気づいた場合、どうでしょうか。試験直前に全範囲を必死になって一晩で勉強しようとするのではなく、その1パーセントにあたるページ、または自分の状況で勉強できる分量を毎日勉強する、と決意したらどうでしょうか。小さくても着実にわずかな改善を積み重ねて生活すると、ついには自分の弱点のうち最も厄介なものにさえ打ち勝てるようになるのでしょうか。
著名な作家のジェームズ・クリアーは、この方法には勝算があると述べています。その主張はこうです。「習慣は自己改善を『複利で』積み上げたものです。毎日何かをたった1パーセントずつ良くすることができれば、1年の終わりまでに37倍良くなります。」
ブレイルスフォードの小さな改善は、装備やユニフォームの素材、トレーニング法など、目に付くものから始めました。しかし、彼のチームはそこで終わりませんでした。栄養や整備の微妙な点など、見過ごされていた予想外の分野で1パーセントの改善点を見つけ続けたのです。時が経つにつれて、このようなほんの小さな改善が積み重なって驚異的な結果に結びつきました。だれにも想像できないほど早く、5年の予定が3年で成果が出たのです。
しかし、この方法には一つ注意点があります。小さな改善を積み重ねて成果を出すには、来る日も来る日も継続して努力することが必要だということです。しかも、完全になることはないにしても、粘り強く忍耐力を働かせる決意をしなければなりません。一夜で野球の大谷翔平選手や卓球の伊藤美誠選手になろうとしないのと同じように、改善の方法も徐々に進めていかなければなりません。大幅に生活を変える必要があるとしても、小さなことから始めてください。圧倒される思いをしたり、落ち込んだりしているときには、特にそうです。
また、このプロセスはいつでも容易にいくわけではありません。固く決意したとしても、挫折はあるかもしれません。私はこの挫折を経験したことがありますので、1パーセント進んで2パーセント戻るように感じることがあるということを知っています。
ところで、イギリスの自転車チームがこの理念を実践して以来、20年でどうなったでしょうか。イギリスの自転車選手は、驚くことに今ではツール・ド・フランスで6回優勝しています。過去4回のオリンピックでは、自転車競技に取り組んでいる国の中で最高の成績を収めています。そして昨年の東京オリンピックにおいて、イギリスは他のどの国よりも多くの金メダルを獲得したのです。
1%の改善努力は、皆さんのこれからの高校生活に最大の効果をもたらすに違いありません。皆さんに大いに期待しています。
結びに、私ども教職員、全力を尽くして教育に当たる決意を表明し、保護者の皆様に、本校の教育活動へのご理解とご支援をお願い申し上げるとともに、新入生の皆さんが今日の喜びを忘れず浜田商業生としての自覚をもち、充実した高校生活を送れることを切望し、式辞といたします。
令和四年四月八日
島根県立浜田商業高等学校
校長 平野 謙二